Black Peace
「大野さん…一回落ち着いて…?」
香川は少し赤くなった目で言った。
「でもっ!」
「私も同じよ!できることなら犯人を見つけ出したい!大事な親友をこんな目に合わせた人をひっぱたきたい!ここにいるみんな、たぶん同じ気持ちだと思う!でも……」
香川は後半声をしぼませ、大野から手を離した。
「もしそれで大野さんに何かあったら、綾乃はもっと傷つく……」
「……」
香川の涙混じりの声に、大野は少しの間黙り込む。
そこで木下が提案をあげた。
「じゃあリヒトが大野ちゃんに同行してあげればいんじゃね?」
「は?」
急に自分の名前を挙げられ、思わず眉をしかめる。
「たしかに、リヒトが同行すれば大野さんひとりで行くより危険は少なくなるんじゃない?」
木下の提案に千秋までもが同意する。
その案に大野もコクリと頷き、
「そうね……分かったわ。柴田、私と一緒に犯人を捜して!あなたも、友達がこんな目に合わされて許せないでしょ!?」
大野が…いや、この病室内にいる四人が俺に視線を向けてくる。
その、まるで助けてといいたげな複数のまなざしを順番に見返すと、俺は両手を頭の後ろで組み、言った。
「やなこった」
病室内の夜佐神をのぞく全員が、目を見開いた。