Black Peace


          *


「ありえない……神坂さんには悪いけど、あいつはやっぱりクズよ!この状況で何であんなこと言えんのよ!!」


今にも足下にあるゴミ箱を蹴り倒しそうな勢いで怒鳴る。


険悪なムードの中、千秋が本当に申し訳なさそうに言った。


「ごめんねみんな…。いつもはあんな感じじゃないんだけど……。後で私がちゃんと言っておくから!」


「神坂さんはなにも悪くないわよ。後で私が殴ってやるわ!」


「大野さん落ち着いて!柴田君にはその内みんなで言えばいいわ。それに、あまり病室で騒ぐものじゃないよ…」

香川がもっともなことを言い、何とか飛鳥に冷静になるように促すが、その香川の表情にも戸惑いが見られた。リヒトの言動が未だ理解できないのだろう。



みんながリヒトにグチグチ言っている中、木下は病室の端で一人黙り込んでいた。

たしかにリヒトの口にした言葉は最低だ。


正直、木下自身もリヒトの言葉には腹を立てている。しかし……





リヒトは本気で言ったんだろうか?




木下は先程のリヒトの言動の真意を疑っていた。

何故なら……




病室を出て行くときのリヒトの顔が、あまりにも怒りに満ちていたのを見てしまったから……


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