Black Peace
時刻は五時


日も傾きはじめ、チラホラ下校している生徒も見える。

さすがに、アンダーシャツとワイシャツの二枚だけじゃまだまだ肌寒い。


人の少ない静かな川横の桜並木を、俺は走っていた。

入学したての頃はあんなに満開の花を咲かせていた桜も、徐々に元気をなくし、今では花びらより骨組みのような茶色い枝が目立ち始めている。

地面にはどれほど前に散ったのか見当もつかないピンクの花びらが、無数に落ちている。


ったく、こんなクソ寒い中、なんでこんな必死に走らなきゃならないのか、グチりたくなる。


夜佐神が搬送された病院が地元だったおかげで、目的の場所に着くのに、そんなに時間はかからなかった。



ガランッ!!



鉄製のさびた扉を蹴りあけると、薄暗い内部から無数の眼がこちらに向けられた。


ここ、もと印刷工場として使われていた倉庫は、よく不良グループのたまり場にされることが多い。

それもほとんどが、この倉庫の近くにある明島工業の生徒で、この辺でも有名な不良校でもある。


何個か上の年代では、女子高生誘拐、およびわいせつ行為の疑いで集団逮捕され、ニュースにもなったことヵある。


そして病院に搬送された被害者の女子高生から、大量のアルコールが検出されたらしい。


「なんだてめぇ!!」


一人の男がいち早く怒鳴りをあげた。

それを筆頭に、内部にいる人間のほとんどが鉄バットやらパイプやらを担いでこちらを睨みつけてきた。







< 87 / 101 >

この作品をシェア

pagetop