Black Peace

木下の指定した落ち合い場所は、さほど遠くはなかった。

隣町の明島工業の近くにあるちょっぴり有名な神社の前で、神坂さんと木下が私たちの待っていた。


私の通ってた中学はこの神社の近くにあり、正月の時は地元の友達と一緒によくこの神社に初詣に来ていたものだ。

といっても、グレる前の話だけど…


「不良グループの居場所が分かったって本当!?」


二人と合流するなり、開口一番に木下に訪ねた。


「ああ。居場所というより溜まり場所なんだけど、聞いた話からすると、そのグループはみんな明島工業の生徒らしいんだよ。んでな、数年前に起こした女子高生誘拐事件をきっかけに、どうも溜まり場をしょっちゅう変えてるみたいなんだ。」


なるほど、どうりで夜佐神さんの倒れてた倉庫には影も形もなかったわけだ。


「んで、俺が話を聞いた生徒は元その不良グループだったらしくて、イザコザを起こしてグループから抜けた奴らしくてな、どうやらグループに恨みを持っているらしくて、いろいろ教えてくれたよ。
今の溜まり場はこの近くの廃工場だってよ。」

「廃工場……あそこね。」

木下の話を聞き、独りでにつぶやく。

この近くには確か、廃墟と化した印刷工場があったはず。この辺で廃工場っていったら、あそこしかない。


「でも、その工場にいってどうするの?白状しなさいって言って、不良の人が大人しく白状してくれるとは思えないけど……」


神坂さんの意見はもっともだ。廃工場でたまるような輩が、そう簡単に白状するとは思えない。


「その時はボコボコにしてでも罪を吐かせてやるわよ。」


「向こうは何人いるかも分からないのに、大野さん、一人じゃあまりにも危険じゃ……」


香川さんが心配してくれるのも嬉しいが、危なくても私はやる。大事な友達をあんな目に遭わせた奴を、許すわけには行かない。絶対に!

私は香川さんに笑みで答えた。


「大丈夫よ。いざとなれば木下という盾もあるしね。」


「うん、それ俺は完全に大丈夫じゃないよな?完全に無事じゃすまないよな??」


そりゃ盾が無事ですむわけがないでしょうよ。だからこそこの役割は木下が適任だと思ったまでだ。





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