Black Peace

さきほどの神社から歩いて八分。例の廃工場が見えてきた。

だいぶ長い間放置されているため、コンクリート製の壁はところどころ欠けていて、周りを囲む塀の下からは植物が伸びている。

鉄製のでこぼこ屋根も、長年雨に打たれ続けた結果か、至る所がさびていて今にも崩れ落ちてきそうだ。


もうすでに印刷工場の面影はなく、いかにも不良集団等が溜まり場に使いそうな場所と化している。


勿論敷地の入り口には『立ち入り禁止』の看板が掲げられている。


「ここね……」

工場の目の前につくと、建物を見上げて呟いた。


「すごい古い建物ね…なんで取り壊されないのかしら?」

隣に並んだ香川さんが同じように廃工場を見上げながら呟いた。

確かに、ここまでボロくて不良集団ぐらいにしか使われなさそうな場所なんだから、取り壊されても言いと思うが、なにか壊しにくい理由でもあるのだろうか?

すると後ろから、ちょっとおびえ気味に腰が抜けかけている神坂さんが、


「でもここ……立ち入り禁止って書いてあるよ…?勝手に入っていいの……?」

目の前に掲げられている看板を見つめながら言った。

「こういう場所は基本どこも立ち入り禁止よ。輩がそんなものを守るとは思えないけどね。」


「……だよね。」


私が簡単に答えてあげると、神坂さんは納得したかどうか、とりあえず小さくコクッと頷いた。


廃工場の周りには、進入を防ぐために入り口から塀の上にかけてグルリと敷地を囲むように有刺鉄線が張られていたが、誰がやったのか、入り口の有刺鉄線はうまく切られており、侵入するのに苦はなさそうだ。


私は一応「有刺鉄線で怪我しないようにね。」とみんなに注意を促しながら、先陣きって中に侵入した。









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