Black Peace

敷地内は荒れ果てて、ガラスの破片や鉄パイプ、空き缶等が至る所に落ちていた。


「中に入ったのはいいけど、一体どこから建物の中に入るんだ?」


木下が辺りをきょろきょろしながら言った。

私も一緒になって辺りを見回してみるが、入り口のようなものは見あたらない。

工場の入り口といえば、巨大な鉄製のドアをイメージしていたのだが、一昨日みた青春ドラマに出てきた廃工場とは作りか違うらしい。


と、そこで「あれじゃない?」と指さす香川さんの声に導かれて見てみると、自然繁殖した草に囲まれたボロボロの鉄扉があった。

…まぁ、思ってたより小さかったけど…


みんなその扉を見つめて黙り込んだ。

恐らくこの扉の向こうには大勢の不良集団がたむろしているんだろう。


さっきは自信満々に息巻いていたが、実際私一人で数十人の、しかも男の不良相手に勝てるとは思えないし、思ってもいない。


それでも私は許せなかった。

大事な友達をひどい目に遭わせた奴らを…


そして、自分の、自分たちの力で友達を救うことで、薄情な柴田を見返してやりたいという思いもあった。


どういうつもりであんなことを言ったのか知らないけど、あいつの言ったことは許せない。


あんな奴に頼らなくとも、私たちで何とかしてやる!


必ず犯人を見つけだす!


みんなの思いが一致したのか、私たち四人はお互いコクリと頷き合い、私が先導して鉄扉のノブに手をかけた。


ヒヤリという冷えた鉄の冷たさが伝わり、少し緊張が増す。


暑くもないのに汗を一滴垂らし、私はドアノブを引いた。


キイィィィ………


錆び付いた音を鳴らしながら、ゆっくりと扉を開いた。


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