SNOW
「十時ですね。」

メモ帳に、【10:00 JJ事務所】とだけ書いた。

「じゃあ、私はこのへんで失礼するよ。」

本杉が立ち上がったので、メモ帳を置き、見送りに行った。

「…竜斗君。」

「はい?」

「明日話を聞いて、もしやめたくなったら、やめることもできるんだ。」

「はい…。」

「お父さんたちが言うように、芸能界は厳しい。けど、入ってから抜け出すのは、ほぼ不可能なんだ。だから、明日の話をよく聞いて、真剣に決めてほしい。」

「わかりました。」

「じゃあ、また明日…。」

「はい。」

本杉は静かに部屋を出ていった。

階段を降りる音。父さんたちに挨拶する声。玄関を出る音。

そこまで聞くと、俺はベットに倒れこんだ。

「…芸能界………か。」

外には、冬を知らせる小さな雪たちが、ちらちらと舞っていた…。
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