十三画の聖約

中西小夜子とは高校に入学した時からの友達だ。

出席番号が一番違いで、確か小夜子から話しかけてきたんだと思う。




『なんであなた――…』

「『なんであなたって林檎が好きなの?』だ」

「はぁ?」




科学の授業の後は昼休みになる。

ざわめく教室で小夜子と向かい合ってご飯を食べるのは、これで一体何度目になるんだろう。





「あんたまだ寝ぼけてる?」

「いやいやいや。小夜子が私に初めて言った言葉。」

「あぁ、だってあんた持ってるもの全部林檎柄で、真っ赤だったんだもん」





私の名前は津嶋凛子という。りんこ、がりんご、と似ているからか、昔からのあだ名で。
友達も何を思ったか林檎関係の物ばっかりをくれるから、気が付けば私の身の回りは林檎で統一されていたのだ。





「あんた、照れるとすぐに顔真っ赤になるしね」





まさに林檎だわ。白雪姫っての?と軽く笑う小夜子こそ白雪姫のような姿をしている。

真っ黒な長い髪に白い肌、色づいた唇。ぱっちりした眼は長い睫毛に縁取られていて、すらりと伸びた手足もまるで人形の様で。



小夜子は美しすぎて友達がいない。

驚くほど綺麗な小夜子は驚くほど口が悪く、思ったことは口にする性格であまり同性の子達には好かれていなかった。


だから私と小夜子はうまくいっているのだろうか。



私は小夜子みたいに綺麗じゃないけれど、なんとなくクラスの女の子達にはついていけない。

あまり面白くない性格をしているせいか彼女達も私を敬遠している様で、なかなかこの“白雪姫”の隣は居心地が良かった。
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