不機嫌に最愛
「ったく……、可愛くないヤツ」
ドライヤーのスイッチを入れ、緩く温風をあて髪を乾かし始めた梓希先輩は、溜息混じりに呟く。
可愛くなくてもいいけど、……あれ?
髪の毛、切ってませんよね?
「梓希先輩、髪切らないんですか?」
「うん、却下」
……ほら、また。
横暴なくせに、拒否権も無いまま気付かぬうちに自然と梓希先輩のペースというか、思い通りに事が進められてる。
結局、トリートメントしただけで、サラサラになっただけじゃない。
「別に良くない?サラサラロングヘアー、俺好みだし」
「……本当、理解不能ですね」
私の幾度もの告白はスルーするくせに、この発言。
私自身じゃなく髪だけにしか、興味無いくせに。
「今までそうしてきたんだから、今更、変えようとするなよ」
……ドキッとした。
髪型について、もしくは……私の恋心についてなのかはわからないけど。
後者を言い当てられてるみたいで、瞬間、息を呑んでいた。