不機嫌に最愛
「梓希先輩。……私、」
「萌楓、ドライヤーは?」
「……はい?」
「萌楓、髪濡れたままだろ?髪傷むから、ドライヤー持ってきて」
「……ハーイ、」
なんか、“梓希先輩が好き”って言おうとしてたのに、やっぱり梓希先輩の関心は私の髪にしか向かってない。
さっき、頭ポンポンされた時に、濡れてるのに気付いたのか。
お風呂入ったあと、バレッタで纏めただけだったし。
ヤダとか言ってたくせに、ドライヤーの為にあっさり膝から降ろされちゃうし、本当わけわかんない。
……梓希先輩のバカ。
「よっし!ブローおしまい」
ソファーに座る梓希先輩と、ソファーの前に座り込む私。
当たり前だけど、梓希先輩のブローは私がドライヤーするよりも抜群に丁寧で、髪の毛サラッサラ。
ドライヤー終わったあとでも、ずっと髪の毛触ってるし。
……どれだけ私の髪の毛、好きなの?
「梓希先輩、お茶でもいれてきましょうか?」
少しだけ振り返りながら梓希先輩を見るのは、なんだかんだで髪の毛触りにくい体勢にならないように……とか思っちゃってるからで。
「んー、いや、大丈夫。それより、何日分か荷物纏めな?」
「は?なんで、ですか……?」
振り返った状態のまま、梓希先輩の意味不明な発言に困惑する。
「俺の家に避難。……変質者、また来るかもしれないのに、1人でおいとけるわけないだろ?」
「えー、まさか……」
そんなことあるわけない。
さっきみたいなこと、二度とあってほしくないし。
「わからないだろ?萌楓になんかあってからじゃ遅いの。いつでも俺が助けられるわけじゃないし」
「でも、……どうして梓希先輩の家なんですか」
第一、梓希先輩の家、行ったことないし!!
避難するなら、お兄ちゃんの家があるし、……イヤだけど。
「……理玖(リク)は、アテにならない」
「な、なんでわかったの!?」
エスパー?
エスパーがいる!!
梓希先輩の言う理玖は、私のお兄ちゃんで……