不機嫌に最愛


「きっ、危機感って……?」



梓希先輩と二人きりの部屋。

梓希先輩に横抱きにされた私。

いつも通りの、……好き。

何も、危機感を抱くような状況じゃないと思うんですけど?


考えて、首を傾げてみても、答えはそこにしか行き着かなかった。



「ったく、……俺も男だよ?わかってる?」

「そんなこと、わかってますよ?」

「いーや。萌楓は全然わかってない。それとも……」



呆れた口調の梓希先輩は、ジッと私を見つめて……溜息をひとつ吐いた。



「……梓希先輩?」

「もう我慢しないって決めたし、いいよな?」

「な、え……?」



梓希先輩の膝の上。

超至近距離の私たち。



「萌楓、……好きだよ」



信じられない言葉が聞こえた瞬間、ギュッと抱き寄せられて。

……また唇を奪われていた。

深く蕩けさせられて、何も考えられない……深いキスに。



「んぅっ、……や、待…って……?」



合間に振り切ろうと試みても、……無理。

自分の声じゃないみたいな、甘ったるい声しか出なくて。

……ふわふわするのに胸が苦しくて、目尻には涙が滲んでいて。

離れようとする心と裏腹に、梓希先輩にしがみつかずにはいられないくらい。

自分が自分じゃないみたい……。



「……うん。素直でよろしい」



ようやく唇が解放された時には、息も絶え絶えくったりする私に、満足そうな梓希先輩の声が聞こえた。






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