不機嫌に最愛
*彼女、困惑中につき
【彼女、困惑中につき】
☆゜・*:.。. .。.:*・゜☆゜
夜もふけた頃。
目の前には黒塗りのドアを開けて、微笑む梓希先輩。
……来ましたよ。
えぇ、もう、無理矢理車に乗せられて、拉致るみたいにして、辿り着いたのは予告通り、梓希先輩のマンションの一室の前。
「萌楓ー、入って。寒いだろ?」
ドアを片手で押さえて、もう片方の手を私に差し出してくる梓希先輩に、心臓が音をたてた。
怖いわけでもビビってるわけでも、ないんだけど。
……私、緊張してます。
「あー、もう!!ほら、おいで。」
微動だにしない私に焦れたのか、腕を掴まれて部屋の中へと引っ張り込まれた。
パタンと閉まるドアの音が響いて、
「おじゃまします……、」
おずおずと靴を脱いで、先を行く梓希先輩を追う。
私が泊まる為の荷物は、とっくの昔に梓希先輩に奪われ……というか、持ってくれている。
なんだろう……。
今までにないことじゃない?
重たいからってのはあるにしても、……梓希先輩が私を女の子扱いしてくれてるような、そんな気がする。