不機嫌に最愛
梓希先輩の部屋は、1LDKだけど広さはあるみたい。
けど……、
「梓希先輩?本当に住んでるんですか?」
「住んでるに決まってるだろ?寝て起きて、くらいしかしてないけどな」
「でしょうね。物が無さすぎです」
梓希先輩は、私の荷物を置いて暖房をつけて……
少しだけ忙しなく動いたあと、
「萌楓、俺シャワー浴びてくるから。眠かったら、そこのベッドで寝てていいから。」
「……え、」
「あ、あと、冷蔵庫の中も好きに飲み食いしていいから。」
言うだけ言ってバスルームに消えた梓希先輩に、私は1人部屋に残された。
……よし。梓希先輩いない間に着替えよう。
もう、夜中……日付かわっちゃってるし。
お気に入りのふわもこの部屋着に着替えて、ふーっと息を吐いた。
……今日から、梓希先輩の部屋で暮らすのか。
いや、何日かだけ、だとは思うけど。
部屋の壁際に沿って置かれたベッドを目にして、急にあくびと共に眠気が襲ってきた気がする。
あんなに緊張してたのが、嘘みたい……。
梓希先輩は寝てていいって言ったけど、普通は待つよね?
ベッドの傍に座り込んで、バックからスマホだけ取り出して。
「お兄ちゃんにLINEだけ入れとこう」
一応、心配かけないように。
……お兄ちゃんは、気にしないと思うけど。
“数日間、梓希先輩の家にいます。”
それだけ送信して。
……微かに聞こえるシャワーの水音を耳にしながら、私はいつの間にか眠りに引き込まれていた。