不機嫌に最愛
「萌楓が可愛すぎるのが、悪い。」
いやいやいや、なんで!?
至近距離、しかも唇が微かに触れたまま、私の目を真っ直ぐに見つめてくる梓希先輩は意味不明な呟きを残しながらも、また……私に深く口付けてくる。
なんで、キス!?
「んっ、も…ぅ……、待って……?」
いつの間にか、ベッドに横たわってる私たち。
梓希先輩の左手は私の体の下から、右手は被さるようにして左耳に添えられて。
軽い拘束のように抱き締められていて、逃げ出そうにも自分の両手を梓希先輩の胸に突っ張ることしか出来ない。
何より、梓希先輩のキスが深すぎて、どんなに逃げても私の舌を追い掛けてくるから、結局捕まって……
拒否する両手から、力が抜けていくばかり。
……何分?何十分?
どのくらい時間が経ったのかわからない頃、最後にペロリと私の唇を舐めた梓希先輩が、満足そうな笑みと共に唇を解放してくれた。
「可愛いな、萌楓。」
「~~っ、待ってって言ったのに!!」
「無理。可愛いすぎる萌楓が悪い、って言ったろ?」
息も絶え絶え、整わない私の呼吸と、今更になってドクドク騒ぐ心臓に、胸が苦しい。
梓希先輩を睨みつけてみても、いつの間にやら滲んでいた涙のせいで、……梓希先輩は堪えていないし。
でも、背中を撫でて、髪を撫でる手が優しいから。
私も梓希先輩の背中に手を回して、梓希先輩の胸に顔を埋めた。