不機嫌に最愛
「……だからっ!!なんで、キスするんですか?」
「萌楓が可愛いから?」
「答えになってないでしょう!?」
顔は見えないけど、梓希先輩が微かに笑ってる声がして。
真面目には答えてくれていないのがわかる。
「じゃあ、言うけどさ。……萌楓が俺から離れようとしてるから。」
「……え、」
「今日の昼、髪切ろうとしたりとか、しかも、担当俺じゃなかったこととか。明らかに萌楓の様子おかしいだろ。」
……バレてる。
バレてますよー!!
しかも、声色かわってるから。
さっきまでの空気が一変したように感じるくらい、冷たい声音。
梓希先輩の胸から僅かに顔を上げて伺い見ると、……冷たい視線。
……お昼のデジャヴですか?
射殺される……!!
「萌楓?」
「……何がしたいんですか、梓希先輩は。」
「何って……、聞きたいの?」
抱き締め合って、至近距離で……。
梓希先輩の体温で落ち着くのに、ドキドキする胸の高鳴りは止められなくて。
……梓希先輩の目を見て、コクリと頷くことしか出来なかった。
「さっきまでの強気な萌楓はどこ行ったの?」
ふっ、と吹き出して笑う梓希先輩に、そんなの知らない、としか思えない。
いくら気が強くたって、これだけわけのわからないことだらけじゃ、……弱気な反応しか出来なくなるよ。