不機嫌に最愛


梓希先輩が好きなだけ、なのに。

梓希先輩が傍にいてくれて、驚くけど……触れてくれることだって嫌なわけじゃない。

だけど、梓希先輩は今までずっと、明確な答えをくれないから……。



「萌楓の髪は俺のだから、……他の誰にも切らせない」

「何、それ。勝手に決めないでください」

「無理。却下。」

「だから!!勝手に決めないでください。どうせ、私の髪にしか興味ないんでしょ?」

「んー……、内緒。萌楓は今まで通り、俺のこと好きでいて?」



梓希先輩の右手が私の後ろ髪を撫でて、一束掬い……髪に口付ける。

それがなぜだか、祈りを込めた儀式みたいに見えるのは、……梓希先輩に毒されてるのかな。

結局、梓希先輩のすることなら何でも受け入れてしまう私が悪いのか。



「それは、梓希先輩のお願い、ですか?」

「うん」

「私がこの先、梓希先輩だけ見て梓希先輩だけを好きでいるのが?」

「……うん、」

「しょうがないなぁ……、」



つい、ふっと笑みを溢してしまった。

梓希先輩が、困ったちゃんの問題児とかわがままな子供に見えるのは、……私だけ?



「何笑ってるの、萌楓?」

「内緒です!!しょうがないから、梓希先輩のお願い聞いてあげます。でも、……絶対に梓希先輩が手出したくなるくらい“イイ女”になるから。絶対、梓希先輩が我慢出来ないくらいの私を“恋人にしたい”って言わせてみせるから。わかった?」

「……っ、了解。さすが萌楓。」



私の自信満々な台詞に、堪えきれないという風に笑いだした梓希先輩は、



「じゃ、楽しみにしてる」



私の左耳に手を這わせ、触れるだけのキスを唇に落とした。



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