不機嫌に最愛



しかし、我慢しないとか言ってキスしまくっといて、……好きとかまで言っておいて、逃げたのは俺なんだよな。

わかってたはずなのに、……28歳と20歳であることを今更気にして躊躇った。

……なのに。

萌楓は、俺が我慢出来ないくらいのイイ女になってみせる、とか言っちゃってるし。

可愛すぎだろ。

普通、怒るところだろ?



初めて出会った当時、──萌楓は12歳で俺が20歳。

美容師成り立ての俺は、高校時代の後輩だった理玖の妹である萌楓の“髪”に惚れ込んだ。

黒髪サラサラのストレートロングは、正に艶髪で綺麗すぎて……虜になった。

その頃から、萌楓の髪は俺のもの、な勢いで他の誰にも触らせても切らせてもいない。


萌楓はたぶん、俺をただの髪フェチだと思ってるんだろうけど。

いや、もちろん綺麗な髪は好きなんだけど、……萌楓の髪は特別、いや格別?

……代替品なんて、無い。


というか、なんで萌楓が俺を好きなのか、わからない。

8歳も年上の(しかも、自分の兄ちゃんより年上とか)、28歳の男なんて20歳の女の子から見たら、オッサンだろ。

でも。

好きだと言われ始めた4年前から、……萌楓の気持ちにぐらついていた。

それを、……理玖につい話してしまったのが、失敗の始まりだ。



< 29 / 41 >

この作品をシェア

pagetop