不機嫌に最愛
「おかえりなさい、梓希先輩!!」
「っ、ただいま。萌楓。」
今日の仕事は早上がり、といっても、もう19時過ぎだけど。
マンションの玄関を開けると、キッチンスペースから萌楓が顔を覗かせた。
本当に俺の家か?って聞きたくなるくらい、イイ匂いがする。
そういえば、朝、萌楓が話してたなー。
“夕食作って、待っててもいいですか?”って。
「すぐゴハン出来るので、……先にお風呂大丈夫ですよ?」
「あ、ありがと。」
至れり尽くせり、結婚して奥さんいたら毎日こんな感じなのか?とか考えつつ。
……ヤバい、ニヤケる。
締まりのない顔を見られないようにしながら、部屋に上がり荷物を置いてバスルームへ向かう途中。
ワンルームだから必然的にキッチンスペースの傍を通るわけで……。
エプロン姿、髪をポニーテールにした萌楓の後ろ姿を目にした。
……ベタな展開だけど、28にもなってアレですが。
我慢、出来そうにもないです。
「……萌楓、」
「ひゃぁ…っ!?」
お玉を持って鍋を覗き込んでいた萌楓の背後から、抱きすくめた。
あーもう、可愛すぎだろ。
これで我慢しろとか、どんな生殺しだよ。
「ちょっ、梓希先輩?……どうしたんですか?」
「んー……、」
抱きすくめられたままの状態で、必死に背後の俺を見ようと試みてるみたいだけど、……ごめん、無理。
心の中で謝って、萌楓の剥き出しの首筋に吸い付いた。
「んんっ、や…ぁ……、」
抵抗してるのかしてないのか、どっちかわかんないけど、そんな声聞かされたら煽られるだけなんだけど。