不機嫌に最愛



「ん、……ぁ、もう……冷た、い。」



外から帰ってきたばかりの俺の唇が冷たいらしく、肩を竦めたり体に巻き付く俺の手を剥がそうとしたり、……どうにか逃げようとしてるけど。



「萌楓、イヤ?」



首筋から移動して、耳元で尋ねたら……首を僅かに横に振るし。



「待って、鍋、火消さなきゃ……っ、」



間近で振り返る萌楓の顔は、ほんのり紅潮して目は薄っすら涙の膜が張っている。



「ん、火は消そうか。」



とりあえず、火を消して、鍋に蓋被せて、……萌楓からお玉も取り上げる。

その間も萌楓はじっと俺を見上げてて、……ヤバイ。

昨日まで我慢出来てたのが嘘みたいに、我慢、出来ないかも。

やっぱり、昨日のでタガ外れたかなー。



「萌楓、おいで。」

「え、」



そのまま萌楓を横抱き(所謂、お姫様抱っこ)して、とりあえずベッドに座って自分の膝に萌楓を降ろした。



「……梓希先輩?」

「ん?」

「突然、何してるんですか!?」

「いや、……萌楓が可愛くて、」



“我慢出来ませんでした”とは続けられず、何となく居辛くなり……萌楓のポニーテールの尻尾に手を伸ばした。

クルクル指に絡みつけて遊ぶ俺に、萌楓はしかめっ面で抗議の目を向けてくる。



「梓希先輩は、いつも突然すぎるんですよ。」

「いや、その……ごめん、」

「鍋だって火にかけてるのに、そんなに……我慢、出来なかったんですか?」



言いながら、段々視線を外していく萌楓は、……最終的に俺の胸に顔を埋めていた。



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