不機嫌に最愛
「萌楓さん、お買い物ですか?……って、コスプレ?」
「え、いや……違、」
「萌楓さんなら、どれも似合いそうですねー」
頭を上げて、橘さんは私の後ろのディスプレイに目が行ったらしい。
ニコニコと屈託なく笑ってるけど、……私の否定の言葉聞いちゃいない。
「望月さんとハロウィンですか?」
「……いや、違いますけど、」
「あ、あれ。望月さん、好きそうですよね!!」
だから、私の話、最後まで聞こうよ!!
振るだけ振って聞いてないし、……って。
梓希先輩が好きそうなコスプレ、ですか!?
「ほら、あれ。」
橘さんの視線の先を追った私に気付き、指先で指し示されたのは……、
「……ネコ?」
「望月さん、猫好きでしょ?萌楓さんが着たら、喜びそうですよね?」
真っ黒なファーのポンチョと、同じく真っ黒なファーのショートパンツに尻尾が付いていて。
猫耳のカチューシャ。
……これなら、着れるかも?
「あ!!俺、この前のお詫びにプレゼントします!!ちょっと待っててください!!」
「え!?いや、いらないですよ?……って、また聞いてない……、」
いいこと思い付いたとばかりに話だし、橘さんはピューッと店内へと入っていってしまった。