不機嫌に最愛
私の髪の毛のハズなんだけど、梓希先輩はさも自分のもののような言い方をする。
「梓希先輩の言うことなんか聞きません」
「……本当、今日は突っ掛かってくるな。不機嫌の理由、いい加減話したら?」
「だから、……梓希先輩にだけは話したくありません!もう、切るなら早く切ってください!」
「ハイハイ。お任せください」
……可愛いくない態度なのは、十分わかってる。
だけど、ね?
もう、そろそろ潮時なのかなって感じてるから、“梓希先輩大好き病”は封印しなきゃいけない気がしたの。
片思い歴8年の間、期待させるだけさせといて何も変わらない関係なのはツライです……。
溜息を深く吐き出して、鏡の中の梓希先輩をこっそりと盗み見ると、さっきまでのやりとりが嘘みたいに真剣な顔。
髪に向き合う梓希先輩は、いつにも増してカッコよくて。
諦めようとしてるのに、なんでこうなるんだか……。