不機嫌に最愛
……そっか。
考えてたのとは違うけど髪を切っちゃうんだから、……梓希先輩を好きなこと、今日で終わりにしなきゃいけないんだ。
自分で決めたことなのに、今にもグラつきそうになるほどの想いの大きさに、負けそうで。
「……萌楓?どうした?」
「っ、!」
不意に梓希先輩に呼ばれて、ビクリと肩を跳ねさせた私に、梓希先輩は鏡越しに私を優しい瞳で見つめてくる。
何か答えなきゃと思うのに、梓希先輩が私を見てくれてることが嬉しくて、そんな些細なことに胸がギュッとわし掴まれてる。
ついさっきは、怒ってたから冷たい瞳だったし、尚更。
「萌楓さーん?今度は、心ここに在らずか?」
「……梓希先輩のバカ」
「はぁ?」
鏡越しに笑顔で放った私の一言に、案の定、梓希先輩は困惑顔。
たぶん、梓希先輩は私の片思いを終わらせてはくれない。
……どういうつもりかはわからないけど、そんな予感がする。