私の子猫くん
「でも、亮はまた私を裏切った。何度も何度も私の知らないところで私のことを裏切った。」
「杏……」
杏の目から涙がこぼれた。でも、杏はその涙を拭おうとはしなかった。
だから僕はゆっくりとその涙に手をやった。杏の悲しさが少しでも僕に乗り移ればいいなと思って。
その涙は僕が触れたことのあるものの中で、一番温かかった。
「私ね、強くならなくちゃと思った。亮を心の支えにしてるなんてダメだって。だから、亮のところから逃げるように離れて、ここに今いるの。でも、まだダメだね。今日、亮に会ってあんなに恐くなるなんて。まだまだ私は弱いや。」
僕は、そう言って泣き笑いする杏をじっと見つめた。