私の子猫くん
~side 杏~
「……どうしたの?もう会いたくないんじゃなかったの?」
……電話口で彼はまるで私のことを嘲笑うかのようにそう言った。
「……私はね。」
「……どういうこと?」
「コウが……私の大切な人が亮に会いたいって言うから。」
「……へぇ。よっぽど自信あるんだね。杏のこと奪い返されないって。」
「……そんなこと考えられるような、醜い心の持ち主じゃないの。ただ、真っ直ぐに自分の気持ちを伝えたいだけだって言うから。」
「……ふうん。僕も会ってみたくなった。」
……亮が今どんな顔をしているか分かるような気がする。
……私は少し悪寒を感じた。
「とにかく、6時に私の部屋に来て。それだけだから。」
私は、その悪寒から逃げるように携帯を切った。