私の子猫くん

「……生まれてからしばらくして、お母さんから離されて、僕は捨てられたんだ。何日たったのかも分からない。お腹も空いてきたし、もう鳴くこともできなくて、きっとこのまま死んじゃうんだろうなって思った。」






……そんなに遠くないことなのに、とっても懐かしい。






あの時は苦しかったけど、今はそのことさえも笑って思い出せる。






「とても冷たい雨が降っている日に、最後の力を振り絞って鳴いたんだ。そしたら、杏が僕を見つけてくれた。」







……あの時、僕はとっても嬉しかったんだよ。







「……僕は、人間になって杏を守ることができるようになりたいと思った。杏の一番になりたいと思った。そしたらね、上手く説明できないんだけど……人間になることができたの。で、今は杏の一番でいられるように、傍にいる。」






……これからもずっと。






僕がそっと杏のほうを見ると、杏は僕をずっと見てたみたいで、視線がぶつかった。







そして、杏はゆっくりと微笑んでくれた。



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