私の子猫くん
「もちろん、杏にはそんなことは言わなかったし、今日の話でまた心変わりするかもしれないって思ってたから。」
「……じゃあ、何で僕は杏と別れる必要があるの?」
「……君が相手じゃ、杏は幸せになれないと思うから。ただそれだけ。」
彼はひどく真剣な表情を浮かべながらそう言った。
「……亮なら、杏を幸せにできるの?」
「少なくとも、君よりは。」
「どうして?」
「……コウくんは、本物の人間じゃない。猫から変わった人間なんて誰がこの世で認めてくれる?杏だけが認めてくれても、この世の中で生きてなんかいけない。君は自分でお風呂に入ったり、トイレをしたり、箸を使ってご飯を食べたり、そんな日常生活ができる?」
「……それは。」
「これから一緒に暮らしていくなら、仕事はどうするの?杏と一緒に行動できなくても、自分のことができるの?」
僕がどう返そうか迷っていると、彼は畳みかけるように言葉を重ねてきた。