私の子猫くん
「……杏、早く帰ってきて。」
ベッドにうずくまりながら、僕は泣いていた。
自分の意思とは関係なく流れる熱い涙。
人間はいいよね。悲しいときはこうやって涙が流れるようになってる。
僕は言葉で、色んな表現で、杏に好きだって伝えることができる人間でいたい。
初めて、僕は自分のしなやかに揺れる黒い尻尾と、猫耳を恨んだ。
そして、猫であった自分を疎ましく感じた。
初めから人間として生まれてきていれば、杏をもっと素直に愛せたのかもしれない。
その思いはますます僕に涙を流させた。
僕は、ただベッドにうずくまって自分を責めることしかできなかった。