私の子猫くん
3、杏の過去
~side 杏~
「ごめんね、コウ。退屈だったでしょ?」
「ぜーんぜん。僕、杏がばいとっていうのをしてるとこが見られて嬉しかったよ。」
今日はコウがいてくれたおかげで女性のお客さんが多く、私が知っている中で一番忙しい一日だった。
店長が早めに店を閉めてくれたおかげで、私たちも早く帰ることができた。
コウは隣で何故かずっとご機嫌。手なんか繋いじゃってるし。
「ねぇ、杏。僕、お腹空いちゃったよ。」
「そうだねー。私も。」
でもね、こんな他愛もない会話で笑いあえる時間を大切にしたいと思った。
コウが完璧な人間じゃなくてもいい。
不思議なところばかりでもいい。
私がコウのことを好きで、コウが私のことを好きでいてくれるなら、
それでいいと思ったんだ。