私の子猫くん
「でもさぁ、杏って不思議だよね。」
「……何が?」
かったるい語学の授業を終えた帰り道、美樹は私の胸の中で満足そうにしている黒い子猫を見て言った。
「動物なんかそんなに好きじゃないのに。大切そうにして。」
「んー……何かこの子、私に似てるような気がして。」
私はそう言うと、人差し指で黒い子猫のあごを撫でた。
「……そっか。」
美樹はそう言うと、口をつぐんでしまった。
「……気にしないで。私、今は随分マシだから。」
「うん。」
……私の両親が事故死したことは、美樹しか知らない。
「……ねぇ、そういやその猫ってオス?メス?」
「あ、えっとね……」
咄嗟に話題を変えてくれた。
美樹はやっぱり私なんかより随分出来た人間だ。