泡沫のキス
私の家はよく引っ越しをする。
なぜなら、お父さんがいわゆる、転勤族になるからだ。
17年間の人生で、もう10回の引っ越しを経験した。
「海が近い家は初めてね」
私の部屋のカーテンを開けて、外を見つめながらお母さんが言った。
その“海”という言葉になぜかドキッとする。
「そうだね」
あんな夢、アリエナイのに。
『どうせ1ヶ月だ…』
私は17年も両親と一緒に暮らしている。
1ヶ月なんて、あの魔女の言ったことは既にアリエナイ。