泡沫のキス




確かに、泳ぐのは得意だし、歌うのだって好きだ。

でも、人魚なんてアリエナイ。

私には、声だってある。




「準備できたよ、行こっか」

「あぁ、マリアに似合うかっこいい男の子がいますように!」

「ちょっとやめてよ、お母さん」


何よりも。

お母さんだって、お父さんだって大好きだ。

『わしが、お主の両親となる者には記憶を植え付けておこう』


記憶を植え付けられた、偽の家族なワケがない。

私の記憶すら、偽物なワケがない。

あんな夢、気にする方がおかしいんだ。




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