泡沫のキス
「~♪~♪~♪」
かすかに聞こえて来たのは、とても澄んだ、美しい歌声でした。
「あなたに好きだと伝えたい
痛むのは足ではないわ
あなたを想う、この胸よ
あなたの幸せを想う、
この胸よ」
それは、もういつかも分からない。
遠い昔から歌われる、人魚の悲恋の歌でした。
そう。
あの有名な人魚の歌。
「“好きよ” “好きよ”
心は叫ぶけれど
あなたに伝わることはない
“好きよ” “好きよ”
“あなたが好きよ”
この声は届かない」
そして、美しい歌声は消えた。