泡沫のキス
「僕は朝生 十雅(あそう とうが)です。朝夕の朝に、生きる。数字の十に、雅で十雅。」
そう言うと彼は「よろしくね」と右手を差し出した。
どうしたらいいのか一瞬迷ったが、断るのも感じが悪いので一応。
「よろしく…、お願いします」
私は彼の手を取った。
ふふふ、と笑う彼はやはり女性よりも美しい。
「ねぇ、マリアは転校生?」
「え?」
「見たことがない顔だから。
普通こんな可愛い子、僕、見たら忘れないのに。」
余りに自然に発せられた「可愛い」に、思わず寒気がする。