泡沫のキス
人魚の涙
「日向マリアです。
よろしくお願いします。」
もう手慣れた初日のあいさつ。
クラスを見回せば一番後ろの席に、あの胡散臭い笑顔で手をヒラヒラさせる男が。
「じゃあ日向さんは、朝生君の隣へどうぞ。
分からないこととか教えてもらってね」
まだ若い女性の教師は笑顔で、私の平穏な学校生活の別れを告げた。
重い足取りで席まで行く。
「マリア、一昨年振りだね。
会いたかったよ」
「はぁ、どうも」
着いていきなりの歯の浮くようなセリフに、私の顔が引きつる。
なのに…。