泡沫のキス
「十雅くんって…、もしかして」
「うん?」
「教祖様?」
「あはは!マリア面白いね!
けど違うよ」
そりゃ、そうだ。
私には珍しい、冗談のつもりだったのだから。
「僕は、王子様だから」
なのに目の前に座る彼は、さらっと言う。
もちろん、胡散臭い奴だから信じはしない。
信じるつもりはない。
ない、が。
「あ、朝生君だぁ」
「ねぇ、朝生先輩よっ」
「あぁ~ん、十雅ぁ~っ」
校内見学を一緒にしている…、いや、させられている時の。
この女子の反応。
手を振って歩く、彼。
こんなの見せられたら、王子様って言うのもあながち、嘘じゃない。