泡沫のキス




「十雅くんって…、もしかして」

「うん?」

「教祖様?」

「あはは!マリア面白いね!
けど違うよ」



そりゃ、そうだ。
私には珍しい、冗談のつもりだったのだから。


「僕は、王子様だから」


なのに目の前に座る彼は、さらっと言う。



もちろん、胡散臭い奴だから信じはしない。

信じるつもりはない。

ない、が。





「あ、朝生君だぁ」
「ねぇ、朝生先輩よっ」
「あぁ~ん、十雅ぁ~っ」

校内見学を一緒にしている…、いや、させられている時の。

この女子の反応。

手を振って歩く、彼。



こんなの見せられたら、王子様って言うのもあながち、嘘じゃない。




< 29 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop