泡沫のキス
「ありがとう、マリア。素晴らしい歌声だったわ。皆さん、マリアに拍手よ」
「ありがとう、先生」
マリアと呼ばれた少女は、たくさんの拍手の中、自分の席につきました。
一見、普通のどこの学校でもある会話ですが、明らかに、その“普通”と違うところがありました。
ここは深い深い、海の底。
しかし太陽の光が、どこまでも入り込んでくるような、そんな澄んだ海の底。
マリアにも先生にも、周りを取り囲む者全員が、あの歌の主人公と同じ“貌(かたち)”をしていたのです。
つまり、彼女たちは皆。
“人魚”だったのです。