泡沫のキス
そう言い残すと、マリアはその場から逃げ出し、泳ぎ去ってしまいました。
泳いで、泳いで。
たどり着いたのは、光の届かない真っ暗な海の底。
「ここは、どこ?」
辺りを見渡しても、どちらから来たのか分からなくなってしまいました。
「ここに来る人魚は、あの娘以来だねぇ」
後ろからした、薄気味悪い声にマリアは振り向きました。
そこには、人間と同じ貌をした、黒髪で黒い服を着た色白の女が立っていました。