黒〜忘れた罪〜
「……そこ。」
指差した方向を見ないまま、僕だけを見つめて告げた。
「春佳も……行こう?」
「…………」
差し出した僕の手をとらずに、ただ無言で首を横に振った。
『おい……居たか?』
『いや……』
「っ…………」
僕は泣きそうになったけど、走り出した。
逃げる為に………
本当は、無理にでも春佳を連れていきたかった。
でも、春佳には迷いがなかったから………
最初から決まっていたみたいに、迷わなかったから、連れていかない。
僕は、生き延びるんだ…!!