『短編』恋するハーモニー
さっきまで練習していたのに、誰かが歌い出すと、歌わずにはいられない。
「七海(ななみ)、私、バスの時間があるから先行くね!」
そう言うと、理沙は鞄を持って急いで準備室を出た。
「うん、バイバイ」
七海は手をひらひらと振って彼女を見送ると、思わず吹き出してしまった。
そんなに急いでいるなら、歌っていないで先に帰ればいいのに。
だけど、ギリギリまでその場にいたかった理沙の気持ちは、よくわかった。
誰かと声を合わせる喜びを知ると、そこに加わらずにはいられないのだ。