ピュア
トラウマ
毎日目まぐるしい忙しさ。
私って、仕事と結婚したんだわ。
そう呟きながら、お店の窓ガラスをふく。
そう26になった。
誰も祝ってくれない誕生日。
朝、目覚めと同時に、両親からおめでとうとメールが入った。
最近、二言目には、〔いい人見つかった〕とママからの有り難いお言葉。
友人が次々と結婚していく。
おめでとうとの気持ちと裏腹に、〔ブーケは、宏美に渡すから〕との一言が胸を刺していた。
ずっと仕事を生き甲斐にするんだ。笑顔で強がる、私。
本当は大好きな人と一緒に居るのが、うらやましくて仕方なかった。
私の大切な人・・・・。
一分一秒必死に生きてきたのだから。
宏美は、
デパートのショップの販売員。店長を任されていた。
毎日10時くらいに帰宅する。
デート何て。忘れかけている自分がいた。
〔彼氏いない歴2年かぁ~。〕
ふと愛犬、しろを見ながら、ビール片手に溜息をついた。
そう、宏美は恋愛に自暴自棄になっていたのだ。
あの2年前の出来事から。
そう思い返すと2年という空白の時間が蘇るのだ。
2年前のあの日…。
自分の歴史のページが一枚一枚、頭を駆け巡った。
宏美は自身をすっかり失っていた。
と同時に大切な人を失う恐怖に突然、襲われる。
男性から言われる言葉、かわいいね。
優しいね。が全て嘘に聞こえてならなかった。
かけがえのない存在。大好きな人。
そう2年前のあの日・・・・・・。

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