君だけを……。
そんなこと、分かってる。
他人に言われなくても、分かってる。
だけど、いつまでも胸が痛かった。
早く帰って忘れようと思い、なんとか足を動かして教室へ戻った。
そこには、直樹がいた。
自分の席に座って、俯いている。
元気がなさそうに見える。
だから、声をかけるか迷った。
「哀っ!帰ろう」
私が迷ってるうちに、直樹が気付いた。
勢いよく立ち上がって言う。
声は元気だったけど、表情は少し切なかった。