君だけを……。



「ごめんって。
だって、お金がないんだよ」




顔の前で手を合わせて謝る。


お金がないのも事実だけど、本当は戻るのが怖かった。


どこかで偶然会ったら、どうしようかと思った。




「ところで、こっちに戻って来るって誰かに言った?」




いきなり純ちゃんが、神妙な表情をして言った。




「誰にも言ってないけど。
純ちゃんしか知らないよ」




「そっか」




転校したあと、純ちゃんとも直樹の話しをしていない。


私も状況など、何も聞かなかった。




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