*春待つ疑問符*
お兄さんは、僕のランドセルを抱えると、僕の手もつかんで歩き始めた。

「誘拐犯じゃないから安心しろ。」

お兄さんはそう言って笑うと、学校へと続く桜並木の道を早足で進んだ。

お兄さんはなんだか、僕の兄ちゃんと同じにおいがして、悪い人には見えなかったから、僕は無抵抗でついて行った。

目的地もなぜだか同じようだし。


その頃、小学校では、まだこない僕のせいで、みんなが大騒ぎしていた。

後から家を出たはずのお父さんとお母さんも僕を心配していた。

入学式は、僕のせいで始まらなかった。

たった6人の新入生が、僕のせいでそろわなかった。

僕が学校についたのは、時計の短い針が10に近づく頃だった。

たしか家を出たのは、8を過ぎた頃だったような…
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