*春待つ疑問符*
「ハル先生はいったい何者なんだ?」

兄ちゃんが呟く。

ハル先生はハル先生だよ。

僕は言う。

「東京から来た教師で、銀髪で、いい人で人気者で。出身地以外、ハル先生の過去情報はなし、っと。何かありそうなんだよなぁ…。」

何かって?

「実は昔、悪かったとか、実は借金取りから逃げてますとか、実は…教員免許ありませんとか?」

兄ちゃんが言う。

「何言ってるの!薫、あんたテレビの見すぎよ!!面白くしようとしないの!」

夕食準備中のお母さんに怒られる兄ちゃん。

「だってさ!?おかしいと思わないわけ?銀髪、遅刻、家無し!」

「人にはいろいろあるでしょ?外見、過去なんてこの街の人にとっては、なんてことないのよ。事実は今、この街の人気者ってことだけよ。」

「どうせ、タケル君人気の延長だろ?ちらっと見たけど、ハル先生、タケル君に似てるところあるよな。」

兄ちゃんが呟く。

お母さんは黙る。

僕は眠い。
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