【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
――私、誰かに恨まれているの?
自分でも気付かないうちに、誰かに、恨まれるような酷いこと、しちゃったの……かな?
「どうして……?」
呟くように発した声が、喉の奥に絡んでうまく出てこない。
分からない。
十七年間生きてきて、こんな経験は初めてで、優花はどうして良いのか分からなかった。
ただ、誰かをこんな凶行に走らせた原因が自分にあるのなら、その人に申し訳ないと思うのだ。
ぐるぐると、ネガティブ思考全開でそんな事を考えていたら、晃一郎に「ばーか!」と軽い罵倒付きで、頭をこつんと小突かれた。
「晃ちゃん、イタイ……」
――確かにお馬鹿かもしれないけど、なにも今、こんな時に言うことないじゃないのよ。
少し悲しくなってきたところに、意外なほど柔らかなトーンの声が降ってきた。
「変なふうに考えるなよ。理由がなんにしろ、悪いのは『犯人』であって、優花、お前じゃない」
「そうそう、たまにはイイこというじゃないの、御堂のわりに」
玲子が、ニヤリと意味ありげな笑みを浮かべる。
リュウも、気持ちは同じらしく、うんうん頷いている。
「たまには、は、よけいだ」
――ううっ。
晃ちゃんが、優しい。
玲子ちゃんもリュウ君も優しい。
気持ちが弱っているときの優しさは、ある種の、凶器だ。
何だか緩んでいた目頭が決壊しそうになった優花は、スン、と鼻をすすった。