【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

留学生のリュウを交えた案内役二人を含む生徒四人が、揃って仲良く授業に出てこないのでは、担当教師は内心ドキドキものだろう。


授業がある手前自分では探しに来ないだろうが、週番あたりに様子を見に来させるくらいはするはずだ。


「ここで、こうしてても仕方ないし、犯人探しは保留ということで。とりあえず音楽室に行こうか? 捜索隊が出ないうちにさ」


苦笑交じりの玲子の提案に、皆めいめいに階段を降り始める。


先に優花とリュウ。


その後に、晃一郎と玲子が並んで続く。


もう既に遅刻してしまっているので今更急ぐ必要もないから、歩調は緩やかだ。


――ああ、やっちゃったなぁ……。


優花は小柄な体をさらに縮こまらせせて、脳内反省モードに突入していた。


晃一郎と玲子ばかりか、リュウにまで迷惑をかけてしまうなんて、案内役失格もいいところだ。


「ごめんね、みんな。リュウくんも、初めての音楽の授業なのに、私のせいで遅れちゃってごめんね……」


「気にしないで下さい。ゆーかのせいではありませんよ。それに、ゆーかが居てくれるおかげで、ボクは授業を受けるのが、とても楽しいんですから」


傷心の友人に対して、大分リップサービスがプラスされてはいるのだろうが、ニッコリと、優花に向けられるリュウの笑顔に、嘘は見えない。

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