【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
――そうなら、嬉しいんだけど。
でも、こうも臆面もなく自分の存在を肯定されると、こそばゆい、と言うかかなり照れくさい。
「私に出来ることなら、遠慮しないで何でも言ってねリュウ君」
「はい。わかりました、遠慮なく。そうですね、早速ですが……」
優花とリュウの微笑ましいやりとりをニコニコと後ろから見守っていた玲子が、その笑顔のまま、隣で面白くなさそうに黙り込んでいる晃一郎に、ボソボソと囁きかける。
「おやおや、なんかいい感じに盛り上がっちゃってますよ、お二人さん。このまま怒涛のラブロマンス路線突入ー、とかしちゃったら楽しい恋のトライアングルバトルが見られるかなぁ? ねー、御堂ー」
「うるさい。妄想は脳内だけにしとけよ、村瀬」
「ほほぅ、いつもより反応が辛辣だね、今日の幼馴染殿は。その金髪化といい、何か心境の変化でもありましたかな? ふっふっふっ」
『アンタの気持ちなんか全てお見通し、作家志望を舐めるなよ?』
そんな晴れやかな笑顔を向ける玲子に、何か反撃してやろうと開きかけた晃一郎の口は、言葉を発することも出来ずに開いたまま固まった。
ついでに、四人全員の足も止まる。
原因は、リュウの放った優花に対する『遠慮ないお願い』とやらのせいだ。
「ゆーか、ボクとお付き合いしませんか?」
出会って数時間の相手に向けるには充分過ぎるほどのビックリ発言だが、ここまでならまだ、理解の範疇だ。
世には『一目ぼれ』というものも存在するのだ。
しかし、続く言葉が、高校生男子が発するにはあまりにも、常識からかけ離れていた。