【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「あら、まあ、まあ……」
ニッコリと、
斡旋した見合いがうまい具合に纏まりそうな親戚のおばちゃんのごとく、満面の笑みを浮かべる玲子の横で、晃一郎が『ちっ』と、低い舌打ちを鳴らす。
「……んなことだろうと思ったよ。中身は一緒か、邪気のない笑顔を振り撒きやがって、シスコンの腹黒天使が」
口の中でブツブツと毒付く晃一郎の呟きを聞き拾ったのだろう、玲子が興味を惹かれたように片眉を上げた。
「ん? 腹黒って誰が?」
「何でもない。独り言だ気にするな」
「ふーん」
興味津々といった風情で注がれる玲子の視線をスルーして、晃一郎は足を止めたまま固まっている優花の頭をペチリと叩く。
「ほら、そう言うのは後にしろよ。ただでさえ遅刻なんだからな」
一瞬かち合った晃一郎とリュウの視線が火花を散らしたように感じたが、きっと優花の気のせいだろう。
「ほーら、足を動かす!」
「あ、ごめんっ」
不機嫌丸出しの晃一郎の声に、優花は慌てて足を踏み出した。