【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

「タキモトって、そんなに悪いやつじゃないと思うけど?」


愉快げに目じりを下げる玲子の言葉に、優花は、不本意そうに唇を尖らせる。


「リュウくんは、いい人だよ。優しいし、面白いし。良い友達になれるなぁとは思うけど、それ以上は考えられないよ」


少なくとも、今は。


「それで、いいんじゃない?」


「え?」


「『ああ、馬が会いそう』、っていう第一印象って、意外と大事だと思うよ、男と女に限らずね。アタシと優花だって、そうだったじゃない?」


数年前、


中学で初めて玲子と出会ったときのことを、思い出してみる。


確かに、目があって、ニッコリ笑顔を返されて『よろしくね』って手を差し出されたその時に、『ああ、この人とは長い付き合いになる』って、確信めいたものが過ぎったけど。


その通り、今もこうして、気の置けない一番の友達だけど。


何事も、例外と言う物があって。


そもそも、


女同士の友情と、恋愛をいっしょくたにしてもいいものか。


経験値の少ない優花には、皆目、見当もつかない。


「まあ、うん。そうだったけど……」

< 143 / 357 >

この作品をシェア

pagetop