【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「うーーん。これ教えちゃうと、返って優花の負担になるかもだけど。タキモトが本気なら本人が言うだろうし、じゃなくても、そのうち外野が気付くだろうし、黙ってても耳に入るだろうから、言っちゃうね」
「へ……?」
「タキモノの言った『留学の目的の一つが花嫁探し』って、まるっきりの嘘でもないみたいなんだな、これが」
「は……?」
玲子が、濃紺のブレザーのポケットから最新のスマートフォンを取り出し、何事か操作して『ほらこれ』と、出した画面を優花に見せる。
その画面に視線を走らせた優花は、僅かに眉をひそめた。
映し出されているのは、インターネットの社会欄のニュース画面だ。
そこに、見覚えのある、エンジェル・スマイルをたたえて紳士然とスタイリッシュなスーツを着こなした、赤毛・碧眼の美青年の姿が映し出されていた。
その青年は、なにやら、SPらしき黒ずくめの軍団に囲まれた偉そうな政治家風の恰幅の良い男性と、にこやかに握手をかわしている。
「これって、リュウくん……だよね?」
どうして、一介の留学生が、ニュース記事になっているのだろう?
それも、社会欄の。
純粋に不思議に思いながら書かれている記事を追っていた優花の目が、驚きに見開かれる。